ああ、ダメだ。こういうの、やっぱりきつい。
桐原くんの言葉に、胸がズキッと痛んだ。
「……花南?」
何の反応も返さないわたしを不思議に思ったらしい桐原くんの声にハッとして、慌てて笑顔を作る。
「あ、ごめん。なんかぼーっとしちゃった」
笑ってそう言ったけれど、どうやら先程の動揺は誤魔化せなかったようで、桐原くんは怪訝そうに眉をひそめた。
「研修にいたってことは、さっきの人、花南の同期か。……もしかしてお前、あの人のこと好きなの?」
何の躊躇いもないまっすぐな言葉にたじろぐ。
どうしてそんな簡単にわかっちゃうの……!
「そ、そんなわけないじゃん! 見たでしょ、暁くんには大事にしてる彼女がいるの。可愛い彼女がいるって、入社したときから有名だったんだから……、そんな、好きになってもつらいだけの人、好きになんてなるわけないよ」
目を見て嘘をつくのは絶対無理。
だからわたしは、まだ少しだけお酒の残った手元のグラスを見つめてそう言った。


