「えっ」

賑やかな店内に間抜けな声が響いたのは、とある水曜日の居酒屋、夜も更けた21時過ぎのこと。

わたしは桐原くんと、仕事終わりに職場近くの居酒屋でご飯を食べていた。

研修のときの約束どおり、桐原くんが誘ってくれたのだ。

大学時代の友達の話から仕事の話まで、共通の話題が多いこともあって、盛り上がりはしても話に詰まることはない。

もともと仲のいい友達だから、会話のテンポも合う。

社会人になってから同期の集まりはあれど、それ以外の男友達なんていなかったから、こういう時間はなんだか懐かしい感覚だった。

19時頃から食べ始めて約2時間、あっという間に時間が過ぎて、まだまだ話は尽きなかったけれど、明日も仕事だしそろそろ帰ろうか、と話していた時だった。

……わたしの視界に、よく知る人の姿が飛び込んできたのは。

え、と思わず声を上げてしまったわたしに、向かいに座っていた桐原くんは不思議そうな顔をして、わたしの視線を追うように振り返った。

そしてわたしの視線の先にいるその人も、わたしの存在に気づいたようで、驚いたような表情でこちらを見ている。