「花南」
無事に研修を終え、会場を出ようとしていたわたしは後ろから名前を呼ばれて立ち止まった。
振り返ると桐原くんがこちらに歩いてくるところで、目が合うとニッと無邪気な笑みを浮かべる。
「おつかれ。スピーチ、すげーよかったよ。先輩って感じだった」
「……それ、本当に褒めてる?」
先輩って感じだった、って。
喜んでいいのだろうか。
微妙な表情のわたしに、桐原くんはカラッと笑う。
「褒めてるって!いやー、大学の頃は妹キャラだったのに。びっくりだよ」
「いやいや、妹キャラとか言われたことないからね」
適当なことを言う桐原くんに思わず苦笑がこぼれた。
桐原くんはあははと軽やかに笑い、その和やかな雰囲気に、なんだか大学時代に戻ったかのような錯覚をおぼえる。
「いやー、なんか懐かしいな、この感じ」
「ほんとだね。みんなはどうしてる?元気?」
「俺も卒業してからはあんまり会えてないけど、たまに会うメンバーはみんな元気だよ」
桐原くんはそう言うと、懐かしいメンバーの名前をあげて、どこに就職しただとか、結婚間近だとか、そんな情報を教えてくれた。


