わたしも入ったばかりのころは、本当に何もできなかったもん。
フロアのなかで自分だけが浮いているような気がしていた。
でも周りは優しい先輩や上司ばかりで質問はしやすい雰囲気だったし、悪いところはすぐに指摘してもらえたし。
それに近くには暁くんがいたから、それほど焦りや居心地の悪さは感じなかった。
でも、今思えばわたし、すごく恵まれてたんだなぁ、って思う。
大事に育ててもらった実感が今になって湧いてきているんだよね。
「まぁ、そうだよな。今頑張らなきゃな」
そう言った桐原くんは、わたしが知っている学生のころと変わらず、切り替えが早い。
懐かしさを感じると共になんだか嬉しくなって、わたしは思わず頬を緩めた。
わたしが桐原くんと一緒に研修室に入ったときには、すでにほとんどの受講生がお昼から戻ってきているようで、席のほとんどが埋まっていた。
桐原くんと別れてからふと周りを見回すと、研修室の一角に同期が数人かたまっているのを見つけ、そちらに向かう。
久しぶり、と挨拶を交わして間もなく、暁くんも合流した。
今日、一緒に講師に呼ばれた中には普段あまり会うことがない本社以外の同期もいて、暁くんは楽しそうにみんなと話している。
やがて進行を担当している人事の研修担当者がやって来て、簡単に流れを説明してくれた。


