一番びっくりしたのは、もちろんふたりで飲みに行ったときに抱きしめられたことだけど。
あれ以来、暁くんが今まで見せてくれなかった顔を見せてくるようになった。
さっきだって、そう。
今までの暁くんなら、絶対わたしに触れたりしなかった。
そりゃあ、一緒にいた時間は短いとは言えないから、今まで一度も互いに触れたことがないわけじゃない。
でも、それって意図せず指や腕が触れてしまうとか、友達同士のじゃれあいとか、そういう類で。
あんなふうに、真剣な眼をしてわたしのことを引きとめるなんて、有り得ないことだった。
……暁くん、どうしたんだろう。
わたしは漸く落ち着きを取り戻してきて、意味もなく開いていたファイルを閉じた。
そして、新規で真っ白なページを開く。
気がつけば就業時間が終わるまであと1時間を切っていて、わたしはひとつ頭を振ると、キーボードに指を乗せた。
……今は仕事中だもん、しっかりしなきゃ。
暁くんのことぱかり考えていたらダメだ。
思考を切り替えるように自分にそう言い聞かせる。
気分を変えようと一口、口に運んだコーヒーは、思ったよりもぬるくなってしまっていて。
そして、思ったよりも、甘かった。


