きみのふいうち


……カチ、と意味も無くクリックの音を立てる。

俯いて書類を見つめるわたしは、なんとも不格好に見えるだろう。

いつもは背筋をちゃんと伸ばすように気を付けているから、オフィスでこんなに猫背になったのはきっと初めてだ。



暁くんを好きになって、はじめて。

自分の想いが怖くなった。

暁くんは、両想いを望んではいけない人。

それを分かったうえで片想いを続けていたはずなのに。

自分では、割りきって恋ができていると思っていたのに。

それなのに、わたしの想いはどんどん深くなるばかりで。

これ以上好きになったらきっと離れられなくなる。
抑えられなくなる。

それが、怖かった。


だからわたしは、この前抱きしめられたことだって、どこか甘い瞳で見つめられたことだって、忘れようとしていた。

これ以上、想いが暁くんに沈んでしまう前に。

叶うはずのない未来を本気で期待してしまう前に、自分の気持ちにブレーキをかけようとしていた。

それなのに、そんなわたしの努力を無駄にしようとしているのではないかと思ってしまうくらい、最近の暁くんはなんだかおかしい。