「あー、なんか課のスケジュールにそんなの入ってたかも。……井倉ちゃん、来週から研修だって言ってたよね?」
くるり、と椅子を回してわたしの後ろの島にいる、1年目の後輩に話しかける。
通路を挟んでちょうどわたしと背中合わせになる位置にいる彼女は、振り向いて頷いてくれた。
「はい、そうなんですよ。なんだか時期ずれてますよね。なにもこの忙しい時期にあてなくてもいいのにって思うんですけど」
うちの会社は1年目の研修は春と秋、2回に分かれている。
他の会社の事情を知らないから一概には言えないけど、珍しいのかもしれない。
井倉ちゃんのデスクは綺麗好きな彼女には珍しく、たしかにいつもより書類が山になっていて大変そうだ。
「でも、久しぶりに同期に会えるし、楽しみでしょ?」
少なくともわたしはそうだった。
井倉ちゃんとは違ってわたしのときはそこまで忙しい時期でもなかったし。
「まぁ、そうなんですけどね」
笑って頷いた井倉ちゃんに、わたしは微笑んだ。
会うのが楽しみだ、と笑みを浮かべる彼女を見ていたら、なんだか少しホッとして。
人前で話すのってあんまり得意じゃないけど、頑張ろう。
わたしは心のなかで気合いを入れ、仕事に戻ろうとパソコンと向き合うようにくるりと椅子を回転させた。


