依然不満げな暁くんの言わんとすることがいまいちつかめなくて、わたしは曖昧に笑った。


「分かってるよ。ちゃんと年上は敬ってますからっ!……ほら、急がないと終電間に合わなくなっちゃうよ」

「……ねえ、花南さん」


スマホで時間を確認してから顔をあげたわたしは、暁くんの表情にびっくりしてしまった。


だって。
なに、その顔。
どうしてそんなに切なそうな顔をするの?

全然わからないけど、暁くんにこんな表情をさせているのが自分だということが信じられなくて、戸惑う。


「あ、暁くん……?どうしたの?」

「……終電とか、どうでもいいよもう」

「はい?え、ちょっ、」


低い声で呟いた暁くんの言葉の意味が全然理解できなくてぽかんとしている間に、グイッと腕を掴まれた。

そのまま強く引き寄せられ、抵抗することもできずに身体が前に傾く。

引かれるままに一歩片足が前に出た時には、すでに思考は停止してしまっていた。