わたしが絶句している間に戻ってきた店員さんに渡されたお釣りを受け取った暁くんが、行こうか、と腰を上げたから、わたしも渋々それに従った。
だけどお店を出てすぐに、わたしは自分の財布を開く。
暁くんが渡したお金とお釣りからなんとなく金額が分かったから、五千円札を抜いて暁くんに押し付けると、彼は困ったように眉をひそめた。
「……いいって。ていうかこれだとむしろ多いし」
「じゃあお釣りをください。多いって言っても、小銭の範囲だよね?」
そう言ったわたしを暁くんはじっと見つめてきて、その視線は諦めろという意志が込められたものであることには気づいたけれど、わたしも頑として譲らなかった。
「……」
そして、やがて。
暁くんは、頑ななわたしに諦めたように嘆息すると、財布から取り出した500円玉を差し出してきた。
「たまにはカッコつけさせてくれてもいいじゃん。確かに同期だけど、俺、年上だよ?」
受け取った500円を財布にしまうわたしを眺めて、不満気に言った暁くん。
そのどこか恨めしげな視線を感じながら、わたしなんかにカッコつけてどうするの、と思ったけれど、口には出さずに心のなかに留めておく。
「年上だけど、同期には変わりないよ」
「……年上だけど、って。なんか軽くない?それホントに分かってる?」


