暁くんはわたしの一方的な終わらせ方に一瞬驚いたようだったけど、それ以上は何も言わずに「今日は俺が払うから、いいよ」とだけ言った。
そんな暁くんにわたしは、自分は今本当に目が点になっているんじゃないか、ってくらい驚いてしまう。
……え。
今日の暁くん、本当にどうしたの!?
同期の仲間で飲むことは多いし、大抵は男女混合のグループだ。
まだまだ新人に近い扱いだから、役職についている人もいない。
人によってお給料に大きな差があるわけでもない。
だから同期の飲み会のときは、男だからという理由で奢るのはナシにしよう。
────入社してから初めての同期会でそう決まって以来、同期で飲むときはいつだって割り勘だった。
暁くんは今まで、少人数で飲むときだってそのルールを破ろうとなんてしなかったのに、どうして?
どうして今日はそんなことを言うの?
……でも、そうだよ、そもそも初めから。
わたしとふたりで飲んでいる時点でおかしいんだった。
やっぱり、いつもの暁くんじゃない。
「……そういうわけにはいかないよ。同期で飲むときは割り勘でしょ?」
わたしは暁くんが持つ伝票に手を伸ばしたけれど、その前に店員さんがやってきて、暁くんからお金と伝票を受け取っていってしまった。


