わたしの家はここから徒歩で帰れる距離にあるからいいけど、暁くんは終電を逃すとタクシーしかない。
しかも近くはないから、結構な出費になってしまう。
いつもは他の同期の家に泊めてもらったりしているみたいだからそこまで気にしていないようだけど、今日はわたしとふたりだもん、終電を逃したら大変だ。
「あ、そっかー、今日はちゃんと終電乗らなきゃなんないのか。……もう少し花南さんと喋りたかったけど」
アルコールのせいか、ほんのり頬を朱に染めた暁くんがサラリとそんなことを言うから、わたしの心臓がドキンと鳴る。
あああ、もう。
簡単にそういうこと言うの、やめてほしい…!
これ以上好きになって、辛い思いなんかしたくないのに。
小悪魔だ。
暁くん、間違いなく小悪魔だよ。
「わたしもすごく楽しかったよ。暁くん、相変わらず話上手なんだもん」
わたしは心臓の鼓動をなんとか抑えつけて、にっこりと笑って見せた。
「せっかくふたりなんだし、本当は仕事以外の話もしたいと思ってたんだけどなー」
少し残念そうに言いながら、暁くんはお会計を呼んだ。


