雲ゐかさ


目を開けると、白い天井。

薬品のニオイ。

いろんな夢を見た気がする。


「気がついたか」

「...兄貴」

「ったくお前は。俊から電話来たかと思えば」

「...あ、試合!」

「終わったよ。勝ったってさ」

「そ、そうか...」

窓の外を見ると真っ暗だった。

「面会時間がもうねえや。俺は帰るな」

「おう。ありがと」

「...辛くないのか」

「! ...辛い時はあるけど、そんな理由でバスケ辞めたくねえよ。友達に言われたんだ。未練あるならぶつかれって」

裏切りたくない。

「克服してやるんだ」

兄貴のため息が聞こえた。

「バスケ続けてくれて俺は嬉しいよ。母さんも心配してたし」

「...なぁ兄貴。兄貴はどうやって克服したんだ? バスケ続けても怪我しただけでコレだし。俺、弱いのかな」

ゴツッ

「いてえっ。け、怪我人にすることじゃねえっ」

「弱くねえだろハゲ。向き合うだけの勇気あんなら平気だ。その友達にも感謝しとけ」

「...うん」

「俺の場合は、彼女かな」

ビクつく俺。
ニヤつく兄貴。

ヤベェ、俊と被る。

「特別な存在っていいぜ〜? 大学生活も楽しいぜ??」

「むっかつく...っ」

「お前は? いねえの? 赤頭」

「うっせーな」

「この前来た子か? ...図星か」

笑を堪えてる兄貴。
赤面で震える俺。

負けた。

「んだよ、見てたのかよ」

「いや、遠くから病室出るのが見えただけ。...じゃーな、明日は俊が来るってよ」

「おう」


...あーぁ。
しばらく戻る気がしないな。



怖い。