雲ゐかさ

「良太っ!」

病室の扉を開ける。
吉田が驚いた表情でこちらを振り向いた。

「俊。来たのか」

「キャプテンから許可取ってきたんで」

「よくこの病院だって分かったな」

「夏も、ここで入院してたから、勘ですけど来ました」

「! そうか、夏も...」

「あの、良太大丈夫っすよね」

眠っている良太の顔を見る。
額に包帯が巻いてある。

「ん、血は出たけど軽いしな。ただ、意識が戻らん。一時的なものだってよ。ほら、イス」

「あ、はい...」

体から力が抜けてきて、俺は吉田の隣に座り込んだ。


「明日はもちろん良太抜きで試合をやる。次は三年生のスタメンで行く」

「...俺、明日はこいつの看病しちゃだめですか」

「そう来ると思った。お前ら、小学校からの仲なんだってな」

「中学は違ったんすけど、よく遊んでいたんで」

「...なぁ、こいつの持病ってなんだ? お前は知っているか?」

「監督知らないんすか?」

「知らねえよっ。睨まれただけだ」

「はは...。俺も詳しくは。中学の時になんかあったらしいです。精神的なやつだってことは、教えてくれましたけど。言いたくなさそうだったんで追求はしてないです」

「精神的な、か。...文化祭...」

「それは違うと思いますけど...」


そのあとは、吉田と一緒に病院を出た。
あとで良太の兄ちゃん、学さんが来てくれるらしい。


何もできない俺は、帰路に着いた。