雲ゐかさ

「ぐっ...!」

相変わらず、良太は中々ディフェンスから抜け出せていないでいた。

勝ってはいるけど、点数は入りづらくなった。

みんな疲れてきてる。


「っおりゃあっ!」


半ば無理矢理に、良太はディフェンスから抜け出た!


「よっし!」

吉田のガッツポーズが見えた。

その時。



ガンッ!!


鈍い音に、倒れこむ良太。


時が止まったみたいに、みんなの視線がそこに注がれ、ボールの音だけ響いた。


「うぁあああぁあっ!!!」


良太の叫び声に意識が戻る。


ピーッ!!


「レフェリータイム!」


審判の声。
唸る良太。

慌てて駆け寄ると、良太は額を抑えて蹲ってた。

「す、すまん! 俺の腕が当たったみたいで...大丈夫か!?」

相手の選手が良太に話しかけるけど、良太の額からは血が出てた。

「だ、大丈夫っ、す。っぎ...っ、大丈夫、ここじゃないから、ここじゃないっ...」

「良太!? どうしたんだよ!?」

ここじゃないって何だ!?
一体...。

「どけお前ら! 担架が来た。良太を運ぶぞ。俊、こいつ乗っけるから頭の方持て」

「はい!」

「近藤! お前代わりに出ろ!! あと和田! お前が代理で監督やれ! あと君。気にしないでいい。謝ったことはこいつに伝えとく。残りの試合、よろしく頼むよ」

「すみませんでした!!」

吉田は選手の肩を叩くと、医務係の人たちとコートから消えて行った。


「良太...」