雲ゐかさ

「強烈な子だったな、高原」

「姐さんって...なんでよ」

「いや、言いたい気持ちは分かる。てか、さっきのすげえな鈴! 慣れてんだろ」

「別に。故郷であっただけ」

「えっ、どこなの?」

「どこだっていーでしょ」

いつもの調子なら、ふざけて問い詰められるけど、なんだか出来なかった。


悲しそうな、そんな遠い目をしてたから。

「ま、ヤバイ子じゃなくて良かった。どっちにしろ早めに捕まえといて正解だったし」

「そーだな。ありがとな、鈴」

「...うん」

少し顔を赤らめる。
ばれないようにそっぽを向く。

やっぱ可愛いなー。

「そーいや、鈴のお相手はいないね」

「お相手じゃないから。じゃ、またね」

「おー、また来週!」

駅の人混みに向かう鈴の背中を見送って、俺もゆっくりと自転車を漕ぎ出した。