「え...っ」


突然の衝撃。
後ろから誰かの声が聞こえた。


「っとぉっとっと! 危ないー!」


振り返ると、息を切らして座り込んでいる女子がいた。
危ないー! って言ってたけど、結局転んでんじゃ...?


「大丈夫?」


「大丈夫! ごめんねぶつかって! 怪我無かった!?」


私が声をかけると、その女子はパッと顔を上げて勢い良く立ち上がった。
かと思えば私の両手を握ってきた。


相手の手には、くっしゃくしゃの白い手紙のようなものが握られてる。


「そっちこそ転んだでしょ? 怪我無いの?」

「転んでないよ! 上手い具合に座れたから!」

...満面の笑みで言われてしまったので、多分大丈夫。


「ごめんね、本当急いでたんだ。君で5人目なんだ、ぶつかったの」

「へ、へぇ」

どんだけ不注意。


「お詫びにこれあげる! さっき掴まえたんだ〜」

手渡されたのは、桜の花びら。


「空中でキャッチしたから! いい事あるよ! じゃあまた後でね!」


笑顔で走り去っていく女子の背中を呆然と見送る私。
手の中にある桜の花びらに視線を落とす。


「いい事、かぁ」