「えっ」

慌ててカバンを見る多希。しまったって顔してる。

「...分かったよ、理由は言う」

ため息交じりに降参の合図。
よっし。

「ちょっと...怪我をしてさ。長引いてるから、入っても迷惑かけるだけだから、辞めようと思った」

「怪我? そんなに酷いの?」

「なんつーか、俺次第」

「?」

「ま、いーんだよ。中学時代はたくさん勝てたし、全国2位までいったしさ」


...あー、こいつ。
すっごくバスケ好きだな。
そんでアホだな。



何もしてないじゃん。


「怪我の度合いは知らんけど。そんな未練タラタラの顔するくらいなら、部活入って砕ければスッキリすんじゃないの」


多希の方は見てないから、どんな顔してるか分からない。
なんとなくイライラしてきたから、そのまま先に駅まで歩いた。


向こうも付いてくる気配なかった。