「なんなんだあいつらっ…!!」
とある町の細い裏道を逃げ回る一人の男。その男を挟むようにして、とても良く似た顔の2人の青年が現れた。
「…依流。フィナーレだ。」
「はい。兄さん。」
依流と呼ばれた青年はどこから出したのか、手にナイフを持っている。それを見た男は焦ったように言葉をまくし立て始めた。う
「ま…まて!!かっ、金ならいくらでもやる!!いっ、いくら欲しい?」
「…俺らは金なんかいらない。」
「じゃ、じゃあ女か?私なら、どんな女でも連れてくることができるぞっ…ひっ…」
「…だまれ。」
依流は、短くいうと男の喉元にナイフを突きつけた。
「っ、わ、私が殺される理由はなんだ!!そうだ!!それが言えないなら私が殺される理由はない!!!」
開き直ったように男がそう叫ぶと、依流はもう一人の青年を見た。青年が、軽く手をふると依流はナイフを男に突きつけるのをやめ、青年のそばへと歩いていった。男はホットしたような顔をしたが、次の瞬間青年の手に握られた銃が自分のほうに向いていることに気づき、再び恐怖に包まれた。
「殺される理由…か。なんだと思う?依流。」
「マスターがそう命じたからです。兄さん。」
「だそうだ。マスターは絶対。…間違ってなどいない。」
「…兄さん。あと2分でリミットです。」
青年はゆっくりと時計を見た。
「もう、そんな時間か…。貴様も良かったな。箱庭のトップが最後を迎えさせてくれるのだからな。」
その言葉を聞いた瞬間。男は恐怖のどん底に突き落とされたように顔を引きつらせた。
「箱…庭…まさか貴様ら…【blood butterfly twins】の依流と…流依…!!」
「おや、俺らのことを知っているとは、流石だな。まぁ、今思い出したところで、なんの意味もないがな。」
「たすっ…たっ…たすけてっくれ…死にたく…なっ…」
次の瞬間、町に銃声が響きわたり、男は動かなくなった。
「兄さん、俺に命じてくれれば良かったのに…。兄さんが手を汚す必要のないやつだ。」
「いいじゃないか。それにあいつもナイフを隠していた。恐怖で忘れていたようだがな」
流依はそう言って、苦笑した。
「そう…でしたか…ナイフを持っていることまで気づきませんでした…」
依流はそう言って、しょんぼりしたが、流依がその頭を軽くなでて明るい口調で言った。
「まぁ、いい。早く帰って始末書を書くぞ。」
「…他になにか失敗しましたか?確か、今日はあの男の暗殺依頼のみ。特に失敗した点もありませんでしたが…時間もぴったりで…」
今日の事をいちいち振り返ろうとする依流の言葉を遮って、流依が言った。
「その様子じゃ、お前にはわからなかったようだな。俺らが仕事をしていた時、一人の女の子が近くを通ってな…こちらに気づいたかどうかは分からなかったが、一応…な。それに、あの顔どこかで…」
「まだ、何か気になる点が?」
「いや、なんでもない。」
「そうですか。やはり兄さんはすごいです!!…始末書は俺がマスターのところへ持っていきます。」
「うん。ありがとう。でも、俺もついていくよ。報告したい事もできるかもしれんしな。…とりあえず、帰ろうか。」
「はい、兄さん。」
その言葉を最後に、流依と依流は闇に姿を消した。