私の家は、学校から少し離れたところにある。と言っても、歩いて15分程のところなのだが…。
「…誰か…いる?」
いつもは誰もいない家の前に、二人の青年が立っていた。
来客だろうかと思いながら、近づいていくと、向こうもこちらに気づいたようだった。
「あの…」
「お前が内海 琴か?」
「え…なんで私の名前…。」
家の者が今は対応が難しいと言う事を伝えようとしたら、唐突に青年達のうち一人が話しかけてきた。私の名前を知っていることから、1回あったことがあるだろうかと、必死に思い出していると、二人は目深にかぶっていた帽子を外した。
「!?あなた…達…」
昨日見た二人の顔とそっくり…いや同じだった。
「やっぱり。昨日君は僕らの仕事を目撃してしまった。」
「え…。まさか、あれは私の見間違いのはずじゃ…」
「ほんとだよ。」
次の瞬間、ずっと黙っていた青年が私の後ろに音もなく立っていた。…首元にナイフを突きつけて。
「…兄さん。やっぱ、始末してしまったほうが…」
「まぁ、待て。マスターの命令は絶対だ。」
「マス…ター?誰よ…そ、れ。」
喉元にナイフを突きつけられているがゆっくり喋ることはできるようだ。
「その質問に今は答えることはできない。」
兄さんと呼ばれた方は、とても冷たい目で私を見ながら言葉を続けた。
「俺達の任務はお前が俺たちのようなものの事を他の人に話さないように監視すること。ほんとは、すぐにでも始末したいところだが、マスターが生かしておいたほうがいいと判断した。運のいいやつだ。ああ、もし情報漏洩しそうになったときは、相手ごと消し去るつもりだ。覚悟しておけ。」
そういって、私にナイフを突きつけていた人になにかの合図をすると、その人は、ナイフをしまった。
「…状況は良く分からないけど…とりあえず、断る事などはできないのよね。」
「ああ。」
「じゃあ、少し質問いいかしら。」
「…いいだろう。」
「あなた達の名前は?それと、貴方達の仕事というのは、具体的には何?ただの荒事屋には見えないのだけれど…」
質問すると、二人は相談するように目を合わせてから答えた。
「俺の名前は流依」
「…俺n…僕の名前は依流」
「ご察しの通り、荒事屋なんて美しい物じゃない。」
「僕たちは箱庭の戦士。俗に言う」
「「暗殺者、だよ。」」
信じられなかった。箱庭というところがあるのも知っていたし、そこは公にはできないような教育が秘密裏になされているというのも、噂で知っていた。でも、それはただの噂、フィクションだと思っていた。
なのに…
「暗…殺…者…」
そう名乗るものが、目の前にいる。
自分が目を背け続けてきた世界の闇の部分に触れようとしているのではないか、そう思うと恐ろしかった。
でも…知らなければならない。誰かが、そう語りかけた気がしたのだ。