後ろを通ったナナから

ねえ、と声がかかる。


「部長がずっと見てるよ」


え、と部長席を振り返ると

部長と目が合った。



部長はふっと笑って

自分の握っている書類に

目を落とした。



「…なに、怖っ。

私なんかやらかしたかな」



「なんだろうね。

カナコの寝癖が気になるのかな」


えっ、と頭に手をあてると

ナナは勝ち誇ったように笑う。


「ひっかかったな」


子供かよ、と

笑いながら返しておいた。