あの日。

駅は人でごった返していた。

脱線事故のため。

ごった返していた。





私は、一人で

人混みの中に立っていた。





お姉ちゃんに

会ってなんかいない。








お姉ちゃんは

鞄を引ったくられてもないし、

Suicaを失ってもないし、

駅で私と会ってもない。







私は、その日、

バスで出勤して、

その日の昼休み、

お父さんからの電話を

とった。








『ミサキがな…ミサキがな……』



お父さんの震えた声が

耳の奥で蘇る。










『ミサキがな……

け……今朝の……

脱…線事故で…な……』