「と仰られますが、婚約というかたちで……」
相手も何としてでもモノにしたいらしく、引き下がることはしない。
流石に嫌気が差した和人は、適当な言い訳をすると、そそくさと彼等の前から立ち去ってしまう、勿論、彼等の空しい声音が響く。
「疲れたのか?」
「……かなり」
「それは、仕方ない。このパーティーは父の為であるが、同時に結婚相手を捜す場でもある」
「父さんも、経験積み?」
「そうだ」
「どうやって、乗り切ったの?」
「相手を見付け、その者と婚約した」
「それが、母さんか」
和人の言葉に、父さんと呼ばれた雅之(まさゆき)が頷き返す。
雅之もまた和人同様に、多くの者から見合い話を持ち込まれた。
しかし唯一違っていたのは、早いうちに将来の伴侶となる恋人を作っていたこと。

