散歩の続きは思っていた以上に会話も弾み、知らないうちに歩きすぎて駐車場に戻ってきた時には日も沈みかけていた。近場で回転寿司をごちそうになり、アパートに到着したのは夜の十時過ぎ。

「遅くなって悪かったな。とし子さんに挨拶していこうか?」

「私が顔出していくので、大丈夫ですよ。また今度時間のあるときにでも、寄って下さい」

大登さんにそう声を掛けると、彼は「わかった」と頷く。

「今日は本当に楽しかったです。なんか全部が夢みたいで」

特にお喋りじゃない私が必死に言葉を紡ぐのは、きっとまだ大登さんと一緒にいたいと思っているから。でも私のことを見つめたまま何も話さない大登さんの腕が伸び、私の髪を梳いてから頬に触れると、心臓の動きが速くなってなにも話せなくなってしまう。

見つめ合っているのが恥ずかしくて目を伏せると、ふっという笑い声と一緒に大登さんの顔が近づいた。

昨日から数えて、三度目のキス。

慣れた……とまでは言わないけれど。自然と目をとじる自分に驚きながらも、大登さんを受け入れる。触れている唇は、二度目までと同じようにすぐに離れる……そう思っていたのに、三度目はちょっと具合が違う?