……って、彼氏ができても二次元好きは続けるの?

と、何処かから声が聞こえたような。

二次元好きは筋金入り。颯との恋も二年だから、すぐにやめるのは無理そうだけど。大登さんと一緒にいる時間が長くなれば、それも少しは落ち着くような気がしないでもない。

目を海の方に向けると、何組かのカップルが仲良さそうに手を繋いで歩いていて。颯相手じゃあ、ああはいかないからねと苦笑する。

「俺たちも、散歩の続きするか?」

そんな私のことを見ていたのか、大登さんはすっくと立ち上がると私に手を差し出した。さっきまでは躊躇していた手をつなぐ行為も、今はなんのためらいもなく大登さんの手に自分の手を重ねた。

手を繋いでいない左手の中には、大登さんのマンションの鍵が付いたキーホルダーが握られている。何の変哲もない鍵なのに、それが大登さんのマンションのだと思うだけで心がこんなにも騒ぐなんて。

この鍵を使うのはまだ先の事になりそうだけど、その日が来るのを楽しみして大切に保管しておかないと。

そっと鞄の中にしまうと、大登さんの左手と絡ませている右手にキュッと力を込めた。