「薫子おまえ、可愛すぎるだろ。俺のこと信用してくれてるのも嬉しくて、いい歳して我を忘れた」

「はぁ、我を……」

さっきの私のどこがどう可愛いのかわからなけれど、信用しているのは本当だから大登さん言葉は素直に嬉しい。

「これで俺も、いつ薫子んちへ行ってもいいってことだな」

「そういうわけでは、ないですけど」

ヘヘッと苦笑い。

いつでもは、ちょっと困る。今はまだ颯が部屋を占領しているし、その他のキャラクターグッズや雑誌でいっぱい。そんな女性らしさがまるで無い部屋に、大登さんをあげるわけにはいけない。それに私のアパートは1DKで狭いから、2LDKのマンションに住んでいる大登さんの部屋で過ごしたほうが無難でしょ。

でもそんな私の事情を知らない大登さんは、納得いかないと怪訝顔。

「なんで?」

「なんでって。乙女の事情です」

なんだ、乙女の事情って……。

しまったと後悔して大登さんの顔を見ると、さっきまでの怪訝顔はどこへやら。得意そうな顔つきで、こっちを見ていた。

「そうか、“颯”か。別にいいぞ、俺は“颯”がいても。“颯”のほうが先に住んでたんだからな」

「そんな、颯を強調して連呼しなくても……」

乙女の事情でバレるとは。私の二次元好きも、これからは程々にしないといけないかも。