「これは夢でもなんでもないし二次元でもない。現実、実際に起こってることだ。まだ俺の言ってることが信じられない?」

大登さんはバカにすることもなく、その声はあくまでも優しい。

「そんなこと、思ってない。大登さんのことが信じられないんじゃなくて、自分の気持ちがよくわからなくて」

少しだけ目線を落とすと、膝の上に置いてある手をグッと握り締める。

私がまだ、二次元の相手としか恋をしたことのないイタい女だから。大登さんに好きと言われてもそれにどう答えればいいのか、その術を知らない子供だから。

せっかくの楽しい時間を過ごしていても、ちょっとしたことで私は大登さんにふさわしくないんじゃないかと思ってしまう自分もいて。

こんな私が大登さんのことを好きになってもいいの?と、その気持ちにブレーキを掛けてしまう。

でも大登さんは、いつでも優しくて。

「そんなもん薫子だけじゃない、俺だってわからないよ。でもそんなこと考えるより、その時の自分の気持ちに素直になって行動したほうが楽しいだろ?」

「大登さんも?」

「そう。まあ俺ももう二十八だし、今までに恋をしてこなかったわけじゃない。それなりに経験もしてきてるから、おまえよりは慣れてるとは思うけど、な?」

大登さんはそう言って私を力強く抱き寄せると、グッと顔を近づけた。