「それって、慣れるものですか?」
ここは素直に聞いてみる。
「俺を誰だと思ってんだよ。任せとけ」
自信満々にそう言うと、大登さんは頭の上に乗せていた手をスルッと頬に滑らせた。
大登さんの魅惑的な瞳に捕まった私は、動くことも話すこともできなくて。お互い黙ったまま、しばらく沈黙の時間が続く。
「プップー!」
その沈黙を破ったのは、大登さんの車の後ろにいる車からのクラクション。
「おっと」
私の頬に触れていた手が、パッと離れる。
びっくりした。
バクバク激しく鼓動を打つ胸を押さえ前を向くと、大登さんに気づかれないように深呼吸をひとつ。
びっくりしたのは、不意に鳴らされたクラクションに驚いたからじゃない。大登さんに頬を触れられ見つめ合っていたのが、もし大登さんのマンションだったら。あの後なにが起きてもおかしくない、甘くて危険な状況だったから。
触れられていた頬が、まだじんわり熱い。
「もうすぐ着くぞ」
「あ、はい」
慌てて足元に置いていた鞄を掴むと、それを胸にギュッと抱きしめた。



