大登さんはおばちゃんに挨拶を済ますと、助手席のドアを開けてくれた。

「すみません」

ボソッとつぶやき車に乗り込むと、車の中からおばちゃんを見る。

「今日はちゃんと帰ってくるから」

おばちゃんが頷きふたりでアイコンタクトを交わすと、車はゆっくり動き出した。

「なんで、ため息?」

「え?」

突然耳に届いた言葉に、驚き振り返る。

「さっき。俺の腕を掴んだ後、深いため息ついただろ? 気づいてないとでも思った?」

ハンドルを握って前を向いたままの大登さんが、チラッと私を窺うように見た。

まさか、あの時のため息を見られていたとは……。

忘れかけていた自分の姿を思い出し、膝より少し短い丈のワンピの裾を掴むと脚を隠すように引っ張った。

「すみません。大登さんに合わせようと頑張ったんですけど、なんかみっともない格好になってしまって」

母は『若いんだからズボンばかりはいてないで、もっと脚出さなきゃダメよ』なんて言っていたけれど、それはスタイルがいい自分に自信がある女性がすることで。私にはムリだったんだ。

後悔に恥ずかしさも加わり、下げた顔を上げられなくなる。