「それはもう肝に銘じて。薫子さんのことは、一生大切にするとお約束します」

大登さんはおばちゃんにそう宣言すると、私の肩をふわりと抱いた。

「大登さん……」

一生なんて言葉、そんな簡単に使ってもいいんですか? ちょっと言い過ぎなような気もするんですけど。

言われ慣れていない言葉に、動揺は隠せない。

「しばらく井澤さんと話してるから、薫子は着替えしてきていいよ」

あ、そうだ。大登さんと朝食を食べに行くんだった。

「はい」と返事をすると、今度こそ本当に階段を駆け上がる。自分の部屋へと飛び込むと、クローゼットへと急いだ。

でも中にある服を見て、気持ちが一気に萎んでいく。

今日の大登さんは、スーツ姿よりはカジュアルと言っても、そこはやっぱりTPOをわきまえた大人の男性で装いで。親近感すら湧いてくる、とか思ってしまった自分が情けない。

男性とのデートはもちろんのこと、友達と出かけることのなかった私のクローゼットの中は、通勤用の服とあまりパッとしない服ばかり。

でもひとつだけ……。

クローゼットの一番隅っこにある、パステルカラーのニットワンピ。去年の春に母に買ってもらったけれど、一度も袖を通していない。

なぜなら、それは……気恥ずかしかったから。