「大登さん、ここってどこですか?」

「ん? 花木町だけど、それがどうかしたのか?」

「花木町!?」

マンションから少し離れてその建物を見れば、私の住んでいるアパートから見えている賃料がちょっとお高いマンションではないか。

いつもベランダから眺めては、あのマンションだったら部屋をひとつ颯や趣味のグッズでいっぱいにできるのに……なんて思っていたけれど。

まさか大登さんが住んでいたとは。

「大登さん、私の住んでいるアパート、この近くです」

「はあ!? マジか?」

私の言葉に大登さんも驚いたようで。でも私の隣まで来ると、ニヤリと含みのある笑みを漏らし肩を抱く。

「それはラッキー。俺の予定通りに、事が運びそうだ」

「予定通り?」

「いや、こっちの話」

大登さんはそう言うと私から離れ、「車、まわしてくる」と駐車場へと走っていった。

「やっぱり変な人」

大登さんの背中を見ながらつぶやく。

確かに付き合うことになったんだから、近くに住んでいたほうがラッキーなのはわからなくもない。もし仕事が溜まって残業になったとしても大登さんがいれば一緒に車で帰れるかもしれないし、そんなとき昨日みたいに夕飯を奢ってもらえるかもしれない。

……ってそれ、全部私がラッキーなんじゃない。