「今日は何か予定あるのか?」

八木沢主任は私の背中に身体を密着させると耳元で囁く。吐息がかかり首をすぼめると、慌てて首を横に振った。

休みの日は、いつも颯と一緒。ほとんど外に出ず部屋で過ごすのが日課の私に、予定なんてあるはずがない。でもそれが予定といえば予定。いつもの私なら実家から顔を見せに来いと言われても『予定あり!』と断っていたのに、なんで今日に限って無いなんて首を振ってしまったのだろう。

昨晩から颯を見ていないから?

いつも大切に持ち歩いている颯のブロマイドは鞄の中だし、寝るときにいつも抱いている等身大の抱枕もない。少し離れただけなのに、私の中から颯がいなくなっていた。

こんなこと初めてだ。

現実世界での恋愛なんて私には無縁なことだと思っていただけに、八木沢主任からの告白はどうにも私の思考を狂わせる。

今だって颯に会いたいと思う反面、八木沢主任が寄り添っているこの状態が心地よいと思う自分もいたりする。今朝も冷えるし、ふたりで入る布団の中が温かいからかもしれないけれど……。