「それって、どういう意味ですか?」
私が気を許す相手なんて、家族くらいなもの。それでも最近は離れて暮らしているせいか、久しぶりに会えば多少緊張したりするのに。
「少なからず、俺のことを嫌ってないってこと。今だって、そうだろ。いくら付き合うことになったと言ったって、こんな状況に驚いて逃げるってのが普通じゃないのか?」
そう言う八木沢主任の口元がニヤリと動き、なんだか楽しそうに人の顔をじっと見つめた。
逃げる? どの口が、そういうことを言うのかまったく理解できない。だって今の私は八木沢主任の腕に抱え込まれていて、逃げることは疎か動くことだってままならない。
それにキャミソールと下着だけのこんな姿じゃ、毛布から出られない。
それをわかっていてそんなことを言うなんて……。
「八木沢主任は、意地悪なことを言うんですね、」
「そうか? 結構優しいと思うけどな」
どこが……。
今だっておかしそうに笑いながら、私の身体を撫でてるし。言ってることとやってることが違うって言うの!
だから早くここから出なきゃって思うのに身体が動かないのは、抱きかかえられていることだけが理由じゃないのを少し前から感じ始めていた。



