どうしてそんな顔を見せたのか、少しは気になるところだけど。それを問いただすことができるほど、私は能弁じゃない。

颯のことが好きなのになんて答えたらいいのかわからない私は、目線をまた生花に戻す。

「ホントにうぶなんだな、薫子は。会社のデスクで颯を見てる時は、キラキラな目をさせてるのに」

「う……」

麻衣さん以外にはバレてないと思っていたのに、八木沢主任も知っていたなんて。デスクで使っていたものを見れば私が二次元好きなのはわかっても、まさかそんなところまで見ていたとは……。

目を合わせられないどころか、顔まで下げてしまう。

でもそんなことまでわかっていて、私のことが好きだというの? 二十二歳にもなって二次元好きで、しかもその中に出てくるキャラクターに恋してる女なんて、普通の男性なら引くんじゃないの?

やっぱりからかわれてるんだ、きっと。

自分の意思ではないといえ、こんなところまでのこのことついてきてしまったことに、今さらながら後悔する。

「薫子もビール飲むか?」

大きく首を横に振る。

「なんだ、飲めないのか?」

さっきよりも大きく、二回首を振った。

「じゃあ……」

「なんで好きだなんて言ったんですか? なんでキスなんかするんですかっ!!」

喉まで出かかっていた言葉が、堰を切ったように放たれる。