「そんなに怒るな。俺はこれくらいがちょうどいい。抱き心地、良さそうだしな」

「抱き心地……」

それって、それって……。頭の中で良からぬ想像をして、ひとり絶句。

私は今、太っていることをいじられて、恥ずかしくてしょうがないというのに。八木沢主任あなたって言う人は……。

恥ずかしさに怒りも加わって、顔がどんどん熱くなる。

「薫子、顔が真っ赤。エッチなことでも考えた?」

顔を覗き込んだ八木沢主任は、意地悪な顔をして笑ってみせる。

最悪……。

それにしても。八木沢主任って普段からよく笑う人だとは思っていたけど、こんな顔をする人だった?

どんなに考えても、八木沢主任がどうしてそんな顔を見せたのかもちろん私にわかるはずもなくて、「考えてません!」とムキになって答えるのが関の山。 

「まあいつまでも店先で話すのもなんだし、うまいもん食いながらゆっくり話そう」

今度は普段の笑顔でそう言うと、八木沢主任は私の腰を優しく押しながら店の中へと入っていく。

中には着物姿の店員が待っていて、何やら八木沢主任と話をすると個室に案内してくれた。