まだ時間も早いことだし、少しくらいなら付き合ってあげてもいい?

本来の自分なら、そんなこと絶対に思うはずないことなのに。不思議ともう少し、八木沢主任と一緒にいたいなんて思ってしまう自分がいた。

寒空の下でずっと立っていたから、脳天まで冷えてしまったのかしら……。

ゆっくり顔を上げると八木沢主任が私のことをじっと見つめていて、いつになく真剣な目に心臓の鼓動が速くなる。

「い、痛い……」

ギュッと胸の辺りを掴むと、顔をしかめた。

「西垣?」

八木沢主任が、今度は心配そうな顔をして私の顔を覗きこむ。

か、顔が近い……。

昼間、社員食堂でのドアップ顔も驚いたけれど、車の中でふたりきりの状態のほうが刺激が強いというもので。

八木沢主任、本当にどうしたというのだろう。今日に限っていきなりこんなことをしてくる、八木沢主任の意図が全くつかめない。

私、何かした?

思い当たる節を、頭の中で検索してみる。

昨日提出した書類に不備があったとか? 今朝出したお茶が熱すぎたとか? それとも……って思いつくはずないじゃない!