隣りに座って私たちの会話を聞いていた大登さんは、おばちゃんの話をすぐに理解し肩を震わせて笑っている。

「大登さん、怒りますよ」

「わかった、怒るなって。そんなに怒ると可愛い顔が台無し……じゃなくて、薫子は怒った顔も可愛いな」

「やっだー、八木沢さんったら。おばちゃんの前でイチャイチャしちゃってー」

大登さんも大登さんだが、おばちゃんもおばちゃんである。

ふたりしてまるで掛け合い漫才のように盛り上がり、私ひとりが蚊帳の外。こんな調子で大登さんと一緒に暮らせるのか、かなり不安になってきた。

それでも井澤のおばちゃんが、大登さんと一緒に暮らすことを賛成してくれてホッとしたのも事実。どうしてかと言えば、私にはもうひとつクリアしなければいけない重要なことがあるから。

それは、私の実家の人間。

母は理解ある人で自分が自由奔放の生きてきた人だから、私の話を聞いてすぐにオッケーをくれた。父は母には全く逆らえない人で、こちらもあっさり許可が出た。

問題だったのは四人の兄貴たち。いつもなんやかんや難癖をつけてくるから、どうしたものかと思っていたけれど。何故か井澤のおばちゃんの前では借りてきた猫のようにおとなしくなってしまうことを思い出し、おばちゃんに協力を頼むと無事に話をまとめることができた。