慌ただしく支度を終え車に乗り込むと、向かったのは市街地中心部にあるジュエリーショップ。人気のお店で女性雑誌などでは見たことはあっても、まだ入ったことはない。いつも前を通っては、ウインドーショッピングだけ楽しんでいた。

でもなんで大登さんが、このジュエリーショップに?

思い当たる節がなくて車の中から店を見ていると、いつの間に降りたのかニヤリと笑った大登さんが窓を覗き込んだ。

「わっ!!」

「行くぞ」

驚く私を車から降ろし、自分の腕に私の腕を絡ませて歩き出す。

「ちょ、ちょっと大登さん。ひとりで歩けます」

腕を組むのは手を繋ぐより密着度が増して、外では少し恥ずかしい。でも大登さんはそんな私の言葉に構わず、引っ張るように歩いていく。

一体何を買うつもりなのか。そこもわからない私は、ただ黙ってついていくだけ。そして店の入ると連れて行かれたのは、指輪が並んでいる棚の前。

「いらっしゃいませ。お探しのものは、エンゲージリングでしょうか?」

素敵な香りのする店員が、上品に微笑む。