土曜日のショッピングモールは混雑していると予想はしていたものの、その人の多さに圧倒される。大登さんと付き合う前までの私は、仕事以外ほとんど家から出ることもなかったから余計だ。

「で、何を買いに来たんだよ?」

あ、言うの忘れてた。

幸四郎にそう尋ねられて、小さな声でそれに答える。

「大登さんの誕生日プレゼントを買いに……」

その答えを聞いた幸四郎の顔が、見る見る厳しい物に変貌していく。

「大登って、お前の彼氏の名前だよな?」

「そ、そうだけど」

「なんで俺が、お前の彼氏のプレゼントを一緒に選ばないといけないんだ」

幸四郎の聞いたことのないような低い声に、一瞬怯みそうになる。でもそこは想定内。

普段の私なら喧嘩腰で話すところだけれど、相手は幸四郎。おだててその気にさせれば、こっちのものだ。

「幸四郎はセンスが良いから、素敵なものを選んでくれると思って」

相手は兄貴だけど、真っ直ぐ目を見つめてちょっと甘えてみたりする。