それもそのはず。

これまで一度だって、買い物に付き合ってもらったことなどない。きっとどの兄貴と買い物に行ったって、あーでもないこーでもないと自由に買い物なんて出来ないから。

でも今日は、ちょっと違う。自分のための買い物じゃなくて、大登さんの誕生日プレゼントを買うため。男の人ためのプレゼントなんて買ったこともなければ、考えたことだってない。どんなものを買えばいいのか全く想像ができないし、でも好きな人のためだから喜んでもらえるものを買いたいというのが女心。

そこで、白羽の矢を立てたのが幸四郎だというわけだけど。

「別に嫌だったら、ひとりで行くからいいよ」

「行く。いや、お前が嫌と言っても、しつこく付いていく!」

しつこいのは遠慮したいかも……。

でも幸四郎は車も持っているし、今日のところは下手に出てお願いするとしよう。

「じゃあ去年出来た、川沿いのショッピングモールに連れてってくれる?」

「おう、任せとけ」

幸四郎はそう言って席を立つと、「着替えてくる」と言ってリビングを出て行った。