大登さんと付き合い始めてから三ヶ月が経ち、季節は春から夏に移ろうとしている。五月もゴールデンウィークを過ぎると気温が高くなる日も増えてきて、春仕様の制服でも汗ばむこともしばしば。

「麻衣さん。そろそろ夏の制服、用意した方がいいですよね?」

「だね」

麻衣さんはミニタオルで汗を拭うと、経理部の窓を全開にする。まだ梅雨前で湿度がないだけマシだけれど、さわやかな風が入ってくると気持ちがいい。

「ところで薫子。その後、八木沢主任とはどうなのよ?」

「どうって、どうもないですよ」

普段なら仕事中に絶対できない会話ができるのは、今日は月一会議で、偉い人はみんな出払っているから。

私の前の席にいる麻衣さんは仕事が一段落したのか、椅子を持ちだすと私の隣に陣取る。

「どうもないって、進展なしってこと? 相変わらず、仲は良さそうだけど」

「はい、仲はいいですよ。八木沢主任、優しいですし」

頭の中に大登さんの顔が浮かびひとり照れると、麻衣さんは呆れたような目をして私の顔を見た。

「はいはい、ごちそうさま。で、あっちの方はどうなのよ?」

「あっち?」

そう言われて反対の方向を向いた私の頭を、麻衣さんが無理やり元に戻す。