薫子さんと主任の恋愛事情


中には麻衣さんの他に、もう五~六人の社員が出勤していた。ドアが激しい音を立てて開いたことに、全員がこっちを注目している。

私と大登さんの手は、まだ繋がったまま。これじゃあふたりの関係が、タダモノじゃないと言っているようなもの。
みんなの反応が怖くて俯くと、大登さんがおもむろにゴホンと咳払いをひとつ。

「みんな、おはよう。まだ数名来てないが、ちょっと報告したいことがある」

普段の砕けた感じじゃなくて真面目感を出すから、部屋がシーンと静まり返る。

ほ、報告っ!? それって、何の報告? 思い当たる節がひとつあるけれど、まさかそれってことはないよね?

騒ぎ出す胸を押さえ、大登さんの次の言葉を待つ。

「私事で申し訳ないが、俺は西垣薫子と付き合うことになった。公私混同するつもりはないが、一応報告まで。以上だ、仕事の戻ってくれ」

思い当たる節が見事的中し、私は大登さんに手を繋がれたまま床にへたり込んだ。

ゆっくり顔を上げ大登さんを見上げれば、子供みたいな無邪気な笑顔で微笑んでいる。

「八木沢主任。社内恋愛なんて告白しちゃって、大丈夫ですか?」

私だって公私混同するつもりはないけれど、バラしてしまった以上お互いにやりにくいことが起きるんじゃないだろうか。