「おはよ」

学校の玄関で美沙と会い、一緒に教室へ行く途中・・・

私の前方には龍之介くん・・・

あぁ、私、龍之介くんに・・・

あの日、人混みの中での告白

あれは鮮明に心に残っている

「好きなんだ」

そう言った声も言葉もはっきりと憶えている

龍之介くんの真剣な目に私は動けないでいたこと

嘘じゃないってなぜか信じられた目

龍之介くんの背中を見つめながら私は思い出していた

うわっ

「お、おはよ」

いきなり振り向くから、驚いてしまって声が詰まってしまった

「おはよう」

そう言って龍之介くんはまた前を向く

とても普通に挨拶を交わしただけ・・・

なんか私だけがドキドキして驚いて、本人の龍之介くんは意外にあっさりとしていて・・・

でも、変に意識するなら普通がいい

普通が一番

「あのさ」

そう思っていた矢先、龍之介くんが立ち止まって私を待っていたみたいで・・・

「は、はい」

驚きの余り、私は敬語になり、しかも声が裏返っている

「今日、一緒に帰れる?」

「は、はい」

「待ってる」

ただそれだけを言って自分の教室に入って行ってしまった