それから、しばらく私は忙しい日々を送っていた。


大学の授業も、サークルも、バイトも、どれも私は全力だった。


こっちに来たばかりの頃は、不安でいっぱいだっただけど、少しずつ友だちも増えて、毎日が充実していた。


バイトは…、
相変わらず失敗ばかりで、杉下さんには叱られてばかりだけど。


『大丈夫、私は元気だよ』

自分の部屋のお気に入りのソファに寝転んで、窓から見える梅雨の晴れ間の青空を見ながら、
私は実家の両親に電話をかけた。


6月27日、今日は私の誕生日。


『紗耶香、お誕生日おめでとう。』

お母さんの言葉に、私は微笑む。


『ちゃんとご飯食べてるの?お野菜をしっかり摂るのよ』

お母さんは心配性だ。

そして、必ず最後に、
『勉強も、他のことも、楽しみなさい。笑顔を忘れずにね。』
と言う。


『笑顔を忘れずにね』

私は小さい頃から、両親にそう言われて育った。


『はぁい。じゃあまた電話するね』

電話を切ると、私は鏡にうつる自分の顔をまじまじと見る。

自分で言うのもなんだけど、かわいい部類には入ると思う、自分の顔。


自分の顔の中で、一番好きなのは、目。
二重だし、くりっとしてるし、悪くないと思う。

お母さんに言われた言葉を思いだし、私は口角をキュッとあげてみる。


左右対称にできるエクボだって、なかなかいいと自分では思う。


うん、
私はやっぱり笑顔が一番かわいい!!


私はそう自分に言ってあげると、昼からの授業に出るため、立ち上がった。