あたしはお姉ちゃん、彼は弟。

『西園交差点…つまり、家から歩いて20分くらいのところにある颯真の中学の近くの交差点で事故は起きた。


５歳くらいの男の子が赤信号で待っていた。


そこに荒い運転をしていた車がつっこんできた。


その現場にたまたま颯真がいて、男の子を助けた。


男の子はかすり傷程度で済んだが、颯真は頭を強く打ち出血がひどかった。』


あたしはその話を聞いて、とうとう涙をこらえられなくなった。


颯真…人助けしたんだ…。


颯真らしいよ？


らしいけど…無茶しすぎだよ…。


「その車の運転手のけがは骨折程度でした。逮捕予定です。」


事故を起こした本人は、骨折程度で済んだんだ…。


颯真みたいに苦しんでないんだ…。


犯人が許せない…。


そう思うのは…あたしだけじゃないよね…？


ガラッ━


手術室のドアが開いた。


中からは１人の男の先生が出てきた。


ランプはまだ点灯しているから手術が終わったわけじゃない。


容態を伝えに来てくれた…？


「一ノ瀬さんのご家族の方ですか？」


「はい。」


あたしたちを代表して、お父さんが答えた。