「私も就職しちゃおっかな!」
「え、そんな軽いノリで決めちゃっていいの!?」
「うーん、特にやりたいこともないしさ!」
「まぁ、フリーターよりはましじゃないか?」
「えー、でも音大とか行けそうじゃない?吹奏楽部の部長さんなんだから!」
今更だけど私、上原穂香は吹奏楽部の部長である。
楽器はクラリネット。
小学生からお母さんの影響で始めたけど、こんな長く続くとはさすがに思ってなかった。
確かに音楽に関することやクラリネットは大好き。
だけど才能があるわけでもない。
部長に自分がなれたのも、努力してきた結果が導いたんだと思う。
大好きだからこそ、大好きなもので挫折して失いたくない…なーんて逃げかな。
「ほら、よく言うじゃん!一番好きなことを仕事にしちゃいけないって」
「それもそうだけどー」
「ってことで就職!決まり!」
プリントの空欄を“就職"という二文字だけで埋めた。
流石に勢い過ぎたかな…でも書かなかったら何か言われそうだし、とりあえずってことで!
「よし、出しに行くか」
「あ、まだ荒木先生前にいるよ!」
「え…なにニヤニヤしてるの」
「なーんも?ほら出し行くよ!」
「あ、待って!」
咲羽め…!
なるべく接触したくないってのにー!
「荒木先生っ、はい!」
「おお、もう書いたのか」
「ほら、穂香も!」
「っ…はい、どうぞ」
目を合わせないようにしながらプリントを差し出す。
「はい、ありがと上原」
「い、いえ」
もっと気の利いたこと言えないの私!?
なんで先生の前だとぶっきらぼうになっちゃうのよ~!
ああもうこれじゃ墓穴掘ってるみたいじゃない…
