「なんだか、悲しい曲ね。」






誰もが知る今や定番とも言えたポップミュージックを、


彼女は切なそうに眉を八の字に曲げ、小さく笑いながら僕にそう、言った。




彼女、矢野明(やのあかり)の第一印象は"不思議な子"だった。


人懐っこい顔立ち反して、彼女は全く《会話》というものをしなかった。

それ故に友だちには恵まれず、いつも一人で行動していた。


そう言うと、一人孤立しているようだが、彼女は不釣り合いにも綺麗な笑みを浮かべ、むしろ僕にはその状況を楽しんでいるかのように見えた。



誰にも縛られず、誰にも強要しない彼女は、僕とは真逆の場所に居て、羨望 に似た感情を抱いていた。