ピンと張り詰める空気。



お互いに隙を伺っていた。



「............」

「............」



身じろぎせずに、攻撃のタイミングを待つ。



そんな折



二人の間に流れる緊張の糸は、ある事であっさりと切られた。



ドサッ



オーリングの背後から、黒い何かが飛び出した。



それは、黒いローブの男で、飛び出したというよりも放り出されたと言う言葉の方がしっくりくる。



ドサ、ドサッ



そして、また一人二人とローブの男が矢継ぎ早に放り投げられる。



何が起こっているのかとオーリングが振り向くと、そこには



「何をしている、オーリング」



サングラスをかけ、黒い軍服とマントを羽織り、肩まで伸びた漆黒の艶のある髪をなびかせる男。



その手には1人ローブの男が、後ろ襟を掴まれてズリズリと引きずられている。



「っ!!きっ貴様!?......何故ここに!!?」



姿を見せぬ敵さえも、怯えているのが分かるほど声が震えてしまう始末。



「......ジンノさん...!」



彼の登場にオーリングの目には涙がうっすらと浮かんでいた。



そう。



この男こそ、この国における歴史上『最悪』で『最恐』の騎士。



如何なる敵からも畏怖の目で見られる




《魔王》、ジンノ・プリーストン




その人だった。



そして彼は



オーリングの腕の中の



白い少女を目にし



その名を呼ぶ。



囁くように小さな声で



有り得ないものを見るかのように



「......ル...ミ......?」





と、───────