それからしばらく、シェイラはぼんやりと窓の外を眺めていた。
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どれだけ時間が経っただろうか。
ふと、一陣の風が舞う。薔薇の香りがふわりと鼻を掠める。
「あ、」
シェイラは大きく目を開いた。
なぜなら彼女の翡翠色の瞳がはっきりとシェイラを捉えたように感じたから。
呆然とお互い見つめ合う。
だがそれもそう長く続く事はなく、ルミは気のせいだったのかと言いたげに目線を逸らしてしまった。
それも当然。
ここは影の部屋。光とは真逆の裏の世界にあるべきもの。光の世界に住まう者には決して見ることはできない。
だからこそ、彼女の目にもこの部屋が映ることはない。
目に映る距離なのに、僅かなこの距離が何よりもどかしい。
直接会いたいという正直な思いと、この国の事情にこれ以上彼女を巻き込みたくないという思いが頭の中を渦巻く。
葛藤しながらも心の中では既に答えが決まっている。
大切に思っているからこそ傷つけてはならない。巻き込んではならない。
頭では理解できているものの、シェイラはもどかしげに眉根を寄せルミを見つめ続けていた。
エンマも窓の淵に座り込み、ルミ達を眺めていた。
しかし、次の瞬間
『ヒイィ!!』
怯えたように奇声を発し転げ落ちた。
「ど、どうしたんだっ、えんま!?」
あまりに突然のことで、シェイラは気づいていなかった。もちろんルミばかりを見ていたからでもあるが。
ユニコーンの真っ青な瞳が一瞬睨むようにエンマを捕らえたことを。
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