約三ヶ月、いつも影の部屋からこっそり観察していたシェイラやエンマには良く分かる。
その笑顔の破壊力と言ったら凄まじいものだ。本当に胸が打たれるような感覚に陥る。澄ましている顔は美しいのだが、笑うと可愛らしい。
そのことに当の本人が気づいていないから厄介なのだ。きっと城内の至る所でその笑顔を振りまいているのだろう。
エンマの話だと、兵舎や訓練場に顔を出すたび、彼女の虜になった兵士たちが歓喜の声をあげているらしい。
「頑張ってくださいね」などと微笑み付きで言われるもだから、兵士たちのやる気は急上昇。いつも以上に訓練に力が入るから、上官達も逆に感謝しているのだそうだ。
兵士達だけでなく、王宮内の使用人達を始め、大臣や貴族たちも彼女の魅力にはまり、虜になっていく。
ルミ自身、笑顔を安売りしているわけではないし、仕事は至極真面目に取り組んでいるため、どうにかして彼女を笑顔に出来ないものかと彼らは日々奮闘しているとか。
そんな彼女もこの時間、この場所へと来ればいつも笑顔になってくれる。役得だなと、シェイラは感じていた。
今日も庭の手入れをしながら、ノアと話しをする。
「ふう、このくらいでいいかな?
ねえノア」
『いいんじゃないか』
ああ。
「会いたいなあ......」
もう一度会って、話がしたい。
二人を見つめるシェイラからふと漏れた声。本人は無意識だったかもしれない。
つい漏れてしまった本音を、エンマは何も言うことなくただ、黙って見つめる。
窓の淵の上で腕を組み、その上に顎を乗せる。
その表情は見たこともないほど切なそうだった。



