『生きて、私のために』
突然現れ、死にかけのシェイラに対して、何の躊躇いもなくそう言った彼女。
彼は長く隠されて生きてきた。
人々は彼の存在を忘れ
もう誰も彼を必要としなくなった。
そんな日々の中で、何年ぶりだろうか、たった一人の少女が彼を必要とした。
実に身勝手で一方的な言葉だろうか。それでも、彼の名を呼び、彼を必要としてくれた彼女の声は彼に生きる勇気を与えた。
彼女がいなければ、シェイラは今ここにいないだろう。おそらく命は尽きていたに違いない。
ろくに食事もとらず、寝たきりで過ごした。当然体中の肉は全て落ち、寝たきりな為筋肉もほとんどなくなってしまっていた。すべての感覚がマヒし、眼もぼんやりとしか見えなくなっていた。
なんとなくだが、自分がもうすぐ死ぬということが分かってくる。
そんな日だった。
彼女が現れたのは。
一日の大半を眠って過ごしていたシェイラにとって、今日が何日か朝なのか昼なのか、そんなことは全く分からない。そんな日々の中、シェイラの名を呼ぶ人などエンマぐらいのものだった。
しかし、その日は違った。
目の前に立つエンマやオーリング以外の人物。
誰かいるのかと聞くと、彼の名を呼んだ。機能が衰えた彼の耳にも真っ直ぐに届く、その澄んだ声で。
そして”ルミ”と、そう名乗ったのだった。



